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大野和士指揮東京都交響楽団第736回定期演奏会

 久しぶりに、大野氏のコンサートを聴くことができた。「今日発売日だよ」と言われて、慌ててチケットぴあにアクセスしてみたら、なんと最後の1枚! 昔はこんなことなかったんですけどね・・・

 プログラムは、

シェーンベルク:浄夜
シマノフスキ:ヴァイオリン協奏曲第1番(独奏:庄司紗矢香)
バルトーク:管弦楽のための協奏曲

 大野氏のコンサートでシマノフスキを聞くのは、これが2回目。1回目は、20年くらい前のことだ。東フィルの常任になった就任第1回目のコンサートが、「柿沼さんの新作、シマノフスキ、スクリャービンの第2番」というプログラム(独奏は荒井英治さん)。そんなこともあって、今回のコンサート、とてもいろいろなことを考えさせられたコンサートだった。

 まず思い出したのは、東フィルのコンサートのことである。就任披露コンサートというと、とにかくお客さんをいっぱいにすることを考えたプログラムになるのが普通なのに、大野氏のそれは、自分のやりたいもの、定期演奏会とはこうあるべきだ、という信念で選んだプログラムだった。もちろん客の入りは最低で、私も必死にPRして何十枚かチケットを撒いたのだが、半分も入らなかったように記憶している。

 大野氏の日本でのコンサートは、初めの頃は全くの不評だった。特に、N響や読響のプレーヤーにはとても評判が悪く、コンサート後に「どうでしたか?」と聞いた何人かの団員のほとんどが「ありゃ、ダメだね。すぐに消えるよ」と言っていたことを思い出す。大野氏の見ている地平をとても大切なものだと思っていた私としては、唯一、東京交響楽団を指揮したデビューコンサートにご招待した指揮者の先生の「あれは、心配しなくても大丈夫。本物だよ。日本じゃだめでも、向こうでならきちんと評価される」という評が、とても心強かったものだ。

 東フィルの常任になってしばらくは、お客さんの入りもとても良いとは言えなかった。当時の東フィルのマネージャーは素晴らしい仕事をしたと思う。大野氏の能力とビジョンを信じて、不入りのコンサートがあっても、大野氏のやりたいようにやらせたのだ。それは、オペラ・コンチェルタンテシリーズなどで結実した。氏が欧州の歌劇場で評価を上げるにつれて、日本での反応も徐々に変化してきた。常に満員になるようになり、評も好意的なものが増えていった。今や、氏が振るコンサートのチケットは、すぐに売り切れてしまう状態にまでなった。

 こんなことを書こうと思ったのは、私にとっては彼が20代から30代のころに、既に、昨日のコンサートで見せた音楽を作っていたことに気がついたからだ。今回のコンサートは、30代のころに聞いたシマノフスキ、40代のときのバルトークを思い出すことになった。

 過去の演奏と比べて、バルトークでは明らかに弦と管のバランスは違った。管楽器が弦を凌駕する迫力を求めたところは、5楽章の最後だけ。若い頃の氏の演奏では、もっと「派手な」ところが多かった。しかし、音楽の作り方、持って行き方には何事の違いもない。あるアマチュア・オーケストラでご一緒した時に、「僕だってこうやって振れるんだぜ」と笑いながら細かく振り分けて見せてくれていた若い頃から、彼の音楽の作り方は一貫しているように思う。

 氏の音楽に私が惚れ込んだのは、彼の考え方によるところが大きい。しかし、実際に演奏を聴いてみても、その思いは変わらなかった。とにかく、音楽が滑らかなのだ。わかりやすく言うと、はらはら、わくわくする音楽でも、はらはら、わくわくしながら、しかし、音楽はしっかりと進行する。変に誇張したり、わけのわからない時間的静止状態などかけらもない。あるオケのヴィオリストが「弾かされちゃう」と表現していたが、演奏者が演奏する音楽を理解していれば、自然に弾けてしまうのだ。だから、作曲家の本質がよく見える。金管に傷はあったものの、気持ちの良いバルトークだった。

 庄司さんのヴァイオリンは、相変わらず凄い。大野氏との組み合わせで聞いたのも2度目だが、「こう弾こう」という音楽が見える。少し気になったのは、右手の軌道が以前より体に寄っていることと、楽器の先端が上がることがほとんどなかったこと。少し無理をしているように思えた。音も、以前に比べるとやや細い感じがした。体を傷めていなければよいのだが・・・

 1曲目の「浄夜」は、大編成でも聞けることを発見した演奏だった。これまで何回聞いたか覚えていないのだが、大編成の演奏で感心したことはなかった。どうしても一人で1パートを弾いている時の機敏性がなくなるので、別の曲になってしまうように感じるからなのだが、昨晩の演奏は、そうした不満を全く感じなかった。別の音楽としてきちんと評価する目がなかったのかもしれない、と、反省した。

 久しぶりに、よいコンサートを聞きました。ありがとう。

 

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