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フォーカルジストニアとの闘い4

【6】姿を現したフォーカル・ジストニアの「本体」

 3月に入ってしばらくすると、関節の状態や運動が明らかに変化を見せた。各関節が少しずつ柔軟性を取り戻し始め、手首の可動域も広がってきた。腕を振り上げて水平に静止させた時に、右手首も左手首同様、下に落ちるようになった。これが、私が欲しかった最初の結果だった。これで、私は当初の仮説が正しかったことを、ほぼ間違いないだろうと思えるようになった。

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●3月5日

各トレーニングのチェック
1)腕を上げること:腕を上にあげたら、肘を後に引っ張りながらゆっくり下ろしていく。後はゆっくりで、ある程度落ちたら、ストン
2)腕を振り上げること:これは大丈夫。手首は大分力が抜けるようになった。
3)横臥して肘から先を上げる/など:目的は、肘を動かす運動を独立させること。肘を動かすと肩を固めてしまう(動かしてしまう)習慣があるので、それを取り去ることが最大の目的。
4)仰向けに寝て腕を上げる(肩を上げないで)これは大丈夫だとおもうのだが、肩関節内に激しい異音。あまりに音が酷いようだと、関節内を傷める可能性があるので注意する必要がある。
5)肩から腕を回す/動かす運動:これもできている。肩関節がかなり動くようになって来た。ただし、これも異音が酷いようなら様子を見ます。
6)腕を上げて握るときは、手首を脱力しておきたい。脱力したままで握れることを目標にしたいのです。次のステップとしては、腕を下ろしたままで握ること。上腕に力が入らないこと。
7)シャドウボウイング:やや肩が上がり過ぎる。物を持ったシャドウは、持たない時と同じ手首の動きがないとダメ。
8)弓を持つこと:上から持つこと。手首が落ちた状態で弓を持っては意味がない、というか逆効果になってしまうよ。
9)手首を振る:あまり長くやらないこと。どのトレーニングもやり過ぎないこと。疲労をためてはダメですよ。
10)首を倒す/関節をユルユル動かすこと:これは大丈夫、つづけてください。
新しい課題:棒を握って、脇を締めた状態で肘を曲げて手先を上げる。そのまま、手首を上下に動かす。肘が回らないように、がポイント。

●3月8日

新しい課題について:手首が上下左右に「ばらばらに」動くことを頭が理解する(再確認する)ことが目的。
新しい課題:ハンドアックスを握る。軽く握った時に、手首が柔軟さを保っている状態を作る。最初に左手で作って、右手に感覚を「移植」する。左手の運動をしている時に、右手首が固まらないように。
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 トレーニングは、「動きを作る」方向に進んだ。まだ筋肉の疲労による硬化が見られたが、固まったために動かなくなる、という状態ではなくなった。少しずつだが、確実に前進していることを、彼も納得してくれたように思う。トレーニングに対して、明らかに前向きになっていた。

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●3月14日

楽器の保持:持ち方を少し変える。肩当てのつけ方に気をつけること。右手の負担を減らすために、楽器を少し内側に向けます。
左手のリハビリ:シュラディックを、音名を歌いながら左手だけで弾くこと。楽器を持つ時に、楽器を挟んだら一旦左腕を下ろし、上腕を外側に回してから、腕を上げて楽器を持つこと。
右手:弓の持ち方を、過去のものに近づけます。小指が当たらないように、手を斜めにして弓の上に置くこと。人差し指は、第2関節が弓にあたるように持つ。楽器を持ったら、そのまま空中でシャドウを10往復やること。それから、弓を持って、弓先の印のところに弓を当て、アップだけ。5回やったら休むこと。アップは、もっと続いているようなイメージで、腕を左上方へ放すようにすること。この方法は、普通の方法ではないが、昔のボウイングのイメージを取り戻すためには最善だと思う。手首のことは忘れていい。力が入っても構わないので、続けないこと。
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 ボウイングをどのように立て直すか、ということについては、多いに迷った。当初の構想では、彼が過去にやっていたような「ロシアン」スタイルに近づけたかったのだが、やってみると手首を水平に横に曲げる習慣が顔をのぞかせた(これは昔のスズキ・メソッド出身者に多い運動で・・・私自身は師事したことはないが・・・鈴木慎一氏の方法論ではないかと思っている)。彼の場合、手首を横に曲げることで上腕部の負担が大きくなり、手首を固めてしまうことは明らかだった。この運動の習慣を取り去ることが、大きなテーマとして2ヶ月以上、私たちを悩ませることになった。

 この時期になって、彼がフォーカル・ジストニアを発症していたことがほぼ明らかになった。

 手首の脱力、筋肉の運動の分離が進むにつれて、弓を持つこと以外の作業については、明らかな変化が見えてきた。当初は腕を振っただけで手首が伸展して固まってしまっていた症状がなくなり、次に、弓以外のものを持った時の手首の緊張(緊張しているのは上腕部の筋肉)がなくなってきた。普通にもつだけでなく、棒を弓を持つように持たせても、手首に力が入らなくなったのだ!

 しかし、弓を持とうとすると、手を開いた瞬間に手首がめくれ上がってしまう。弓以外では全く起こらないことが起こっていた。

 フォーカル・ジストニアは、原因が多岐にわたり、なかなか治らないものだとされている。しかし、彼の状態を見てきて、この段階で「これは、行けるだろう」と確信した。他の要因をすべて取り去ることができたので、純粋に心理的な反応を取り去ればよかったからである。ある意味で「癖」を取り去るのと同じだと考えたのだ。ここまでを「進歩」と思ってもらえれば、残りの道もいけるのではないか、という気持ちを持ってもらえるのではないかと思ってもいた。もちろん、それが大変であり、時間がかかる作業であることはわかっていたが。

 彼には、積極的に「もう、フィジカルには治ったよ。あとは、染み付いた癖を取り去るだけ。少し時間はかかると思うけど、絶対に良くなるから、もう少し頑張ろう」と説明した。

 この時期に、強力な援軍が加わった。彼の奥様がレッスンに同行してくれるようになったのだ。家でのトレーニングも、奥様の力を借りて進めることができるようになった。

つづく

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