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2011年11月

「ザッツ」ってなんだ???

 最近、あるアマチュアオーケストラのコンサートマスターからこんな話を聞きました。

「指揮者に、もっとザッツを出せ、と言われる。他のパートが出るのを間違えるのは、コンサートマスターがきちんと動いてみせないからだ、と言われたけど、コンサートマスターって、そんなにザッツを出すものなの?」

 うーん、とうなってしまいました。アマチュア・プレーヤーならともかく、指揮者がそういうことを言うとは・・・

 こういった勘違いは、アマチュアのベテラン奏者に多く見られます。「トップの仕事はザッツを出すこと」という誤解は、かなり広まっているのではないかと思います。(私が今までご一緒させていただいた指揮者で「これは凄い!」と思えた方が、勘違いをして大げさに動いていた若い頃の私に「指揮者は俺だぜ」と、にやっと笑われたことを思い出します。)

 そうなんです。指揮者を見ていれば、入るところなどはわかるものなのです。それがわからないとしたら、指揮者が悪い(笑)もちろん、奏者が楽譜を見ていなければ論外ですが・・・

 アンサンブルなどをしていると、「トップはザッツを出して、みんながそれに合わせるんですよね」という質問をよく受けます。答えはもちろん「違います!」

 オーケストラにしてもアンサンブルにしても、アマチュアの方には、必要以上に体を動かしているリーダーが多いような気がします。きちんと、しっかり弾いて、自然に体が動いていればよいのです。もちろん、何かあった時には、きっちりとザッツを出すことが必要ですが、指揮者が優れていれば、それすらほとんど必要ありません。

 リーダーは、堂々と弾いて、プレーヤーをリードすれば良いのです。

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ボウイングと呼吸

 ヴァイオリンを弾く時の「呼吸」について、最近入った生徒さんからいくつかの質問を受けました。簡単ですが、少し触れておきたいと思います。

1)ヴァイオリンを弾く時に意図的に呼吸することは、基本的にはないものと思うこと

 いまだに、「ダウンは息を吐く、アップは吸うこと」という指導を受けている生徒さんが多いことに驚かされます。中には、最初の開放弦のボウイングで、「ダウンは吐いて、アップは吸って、できるだけ大きく呼吸をして自然に弓が上下するようにしましょう」という練習をさせられてきた方もいました。実はこれ、とっても危ないんです。

 特に日本で「アップは大きく吸う、ダウンは自然に吐く」と教えられてきた背景には、多くの指導者がロシアンの流れにあったことと無関係ではないと思います。ロシアンのボウイングは、「肘が八の字を描くように」「手首を顔に向かっていくように」など、さまざまな言葉でボウイングの基本を指導してきました。このこと自体、やや危険が伴うこともあります。特に「手首を顔に向かうように」という指示は、肩を縮めたり腕を短くする危険が強く、問題です。ハイフェッツやオイストラフの演奏を見ると(この巨匠2人のボウイングは、ロシアンでも全く異なります)、決して腕を縮めていないことがわかります。

 呼吸に関して言うと、肘を持ち上げるような運動をすると、胸郭が上にせり出そうとします。これが「息を吸うこと」という指導の元になっているのだと思いますが、二つの点で誤りです。

 ひとつは、胸式呼吸を促進してしまうことです。

 安定した体の使い方をするためには、骨盤が安定して、上体をできるだけ楽にすることが必要です。そのためには、腹式呼吸をして、呼吸をする時に胸郭や肩を不要に動かさないことが大切なのですが、腕の上下で「吸う/吐く」を繰り返していると、自然に胸式呼吸をするようになってしまいます。実際、前述のような指導を受けてきた生徒さんは、楽器を弾く時に一生懸命胸式呼吸をしていました。胸式呼吸で使われる筋肉は、腕の運動を促進したり阻害したりする要素がありますが、ボウイングの基本的な運動にこのような「余計なもの」を組み込んでしまうことは避けなければなりません。

 もうひとつは、音楽の流れを大きく損なってしまうことが多いことです。

 バロック以前の弦楽器であれば、むしろ、この呼吸法は理にかなっているかもしれません。なぜかというと、「ダウンとアップは別のもの」という意識が強かったからです。ですから、古いテキストだと、「スティッチ(「|」のこと)はアップで」などと書かれていることもあります。この音はダウンで、これはアップで、という使い分けをしていたのですね。それは、音符の性格と運動によって作られる音とをマッチングさせていたためでしょう。

 しかし、モダンの奏法になると、アップもダウンも同じ音が出せることが前提になります。こうなると、呼吸の違いによって音に差が出ることはマイナスなのです。

 ダウンとアップで律儀に呼吸をすることを覚えてしまうと、たとえば、弓を切った三連符がとても不自由。ダウン/アップがセットになってしまうので、三連符に聞こえない。どうしても三連符にするには、三連符の頭にアクセントを付けなければならなくなってしまいます。フレーズにしても、「ボウイング・フレーズ」(ボウイングごとにフレーズが切れること)になってしまうことが多いのです。

 呼吸は、弓の運動に関わらず、自然に腹式呼吸が行なわれていることが「原則」です。意図的に呼吸をするのは、ごく限られた場合だと思って下さい。呼吸のことを考えるのであれば、丹田を鍛え、自然な腹式呼吸ができるようにすることがポイントです。

2)アウフタクトで吸う、は、危険

 これも、多くの方が間違えていることです。危険なことはたくさんあるのですが、2点に絞って説明しておきましょう。

 まず、アウフタクトの形は多様である、ということです。

 アンサンブルをやってみると、「アウフタクトは吸う」という原則を守っている人が、合わせることに苦労するシーンをよく見ます。それは、アウフタクトの形の違いを理解していないからであることが少なくありません。

 例えば、ベートーヴェンのメヌエットのようなアウフタクトと、ガヴォットの形式の弱起は、意味が違います(し、ボウイングもアップとはかぎりません)。これを同じような呼吸で処理することには無理があります。さらに、このふたつのようにアウフタクトのリズムが次の強拍と分離している場合と、アウフタクトが次の強拍とリズム(アーティキュレーション)として連結している場合(ブラームスの4番の交響曲の冒頭など)では、イメージも運動も全く異なります。

 あえて、「アウフタクトで息を吸う」という方向で考えてみると、「アウフタクトで息を吸う場合は、いろいろなパターンがある」ということになるでしょう。息を吸って止めてから始めるアウフタクト、息を吸いながら弾くアウフタクト、大きな息を吸っている途中で音が始まるアウフタクト、など、いろんな弾き方がありそうです。

 呼吸を意識して行なうのは、体を整えるためであって、運動を作るためではない、という原則を忘れないでいただきたいと思います。

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弦楽器フェア2011

 恒例になった「弦楽器フェアツアー」に行ってきました。

 私のレッスンの最大の方針は「楽器をきちんと鳴らすこと」です。どんなベテラン(や音大生)でも、最初に要求されるのは「開放弦をきちんと鳴らすこと」です。これがなかなか難しいのですが、結果として、始めて数年のレイトスターターでも、私の生徒は、音はいっぱしです(笑)。

 その結果として、楽器に対する不満が「表面化」するのが早いのです。

 私は、最近の新作楽器の多くに、実は大いなる不満を抱えています。最大の理由は「プレス耐性が弱い」ということです。

 導入用の量産楽器に顕著なのですが、とにかく「雑音を少なくする」ことを最大のコンセプトとして作られた楽器が多く、どの楽器も「弱い」のです。昔は、「新作楽器はそれなりに雑音が多いもの」でしたが、ここ10年くらいの新作楽器をみていると、どれもこれも雑音が少なく感じます。そのかわりに犠牲にされているのが、楽器の「鳴り」です。さっと、なでるように弾くのであれば良いのですが、しっかりした音を出そうとして腕の重みを十分にかけると、音がすぐに歪んでしまう楽器が多いのです。

 こうした楽器は、教え手に取っては楽かもしれません。楽器を鳴らさなくても、そこそこ「きれいな」音がするからです。そのせいかどうか、最近「転校」してくる生徒は、どの方も右手の余分な力は少ないかわりに、音がないのです。

 生徒に楽器を持たせて私が弾くと、全員、びっくりしてしまいます。「こんなに大きな音がするんだ!!」

 そうなんです。楽器って、ほんとに良く鳴るんですよね。それを、まず、知って欲しい。

 最初は苦労しますが、音が出てくると、楽器の限界が見えてきてしまいます。「楽器の能力の80%が出せたら、楽器を替えないと不満が出るよ」と私は言っていますが、前述のような「重さに耐えない」楽器を持っていると、あっという間に楽器にたいして不満ができてしまうのです。そのために、生徒の「楽器買い替え率」が異常に高い(苦笑)。

 楽器を買うことは、人生の一大事です。安いものではありませんからね。(でも、不思議なのは、10年経ったら無価値になる車には何百万も平気で使う人が多いのに、きちんと使えば価値が減らない楽器が「100万」というと、「高い!」と思われる方が多いことです。価値観の違いですが・・・)そのために、音楽やヴァイオリンを弾くことの経験値が低い生徒が楽器を新調しようとする時には、たくさんの楽器屋さんを回らせます。てっとりばやいのは、弦楽器フェアです(笑)

 ご存知のように、弦楽器フェアには、製作家協会の会員さんたちが作った楽器だけでなく、楽器屋さんのブースもたくさん出ています(しかし・・・減りましたねぇ・・・景気のせいだと思いますが・・・)。いろいろなタイプの楽器を弾いたり経験したりするチャンスなのです。そこで・・・

 楽器を新調したい生徒を連れて弦楽器フェアに行くことが、半ば恒例化してしまいました。生徒を何人も引き連れて楽器を弾いて回るのを見て、ある生徒が「院長回診だ/笑」。しかし、一緒に行く生徒は、みなさん「良い経験をしました」と言ってくれます。

 今年は、毎年出展されている会員さんの楽器の中にも、「これは面白い」と思うものが数点ありました。昨年までと明らかに違う楽器になっているものもあり、とても面白い。値段に関わらず、面白いと思う楽器を弾かせていただくのは楽しいものです。意外(去年まではあまり面白いと思わなかった)な出会いもあって、生徒たちも「ほんとうに、いろんな楽器があるんですねぇ・・・」と素直な感想。弾いた楽器は、のべ140台。桁違いに高いものを除けば、その中で印象に残った楽器が8台ありました。この楽器たちが、どこでどのように活躍するのかを想像することも楽しいことですね。

 終了後は、神保町の中華料理屋で「お疲れさま」。たしかに、ちょっと疲れました(笑)来年もまた行きます。

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楽曲解説講座

 初めての企画として、名曲を解説する講座を行ってみました。曲目は、スプリングソナタの第1楽章とクライスラーの「プニヤーニのスタイルによる前奏曲とアレグロ」です。  こういう企画をやろうと思ったのは、実はかなり前です。レクチャーコンサートをやり始めて、諸事情で続けられなくなってしまった時に、「何か替わりのことができないだろうか」と思ったことがひとつ。自分としては思い入れのあった企画なので、できなくなったことがとても残念でした。もうひとつは、最近、私がやっていることを何とか少しでも遺したい、と思い始めたことです。  回り道をして音楽の世界に戻ってきた私にとって、自分が思い切って仕事ができる時間は限られています。音楽を専業(本業)にしよう、と決心したのが30代後半のこと。人よりも、少なくとも15年は遅れています。もちろん、アマチュアとして活動してきた時にも、人以上に音楽に向き合ってきたという自負はありますが、それでも「お金をいただく」立場として、責任を持って音楽に関わってきた時間は、それほど長くはありません。ですから、残された時間に何ができるか、ということと、「伝えて欲しい何が遺せるか」ということは、私にとってとても大きなテーマです。  レッスンをしていて、新しい曲に向かい合う時に、(音大生であっても)「姿勢が甘い」と思うことが多いことが、こうした講座をしようと考えたもうひとつの理由でもあります。楽譜の読み方が甘い、楽譜にある情報を理解していない、と思うことはとても多く、曲や音楽の魅力を十分に理解していないのではないか、と、常に危惧していました。そこで、「こんなことを考えて演奏/練習をするんだよ」ということを見せたかったわけです。  結果は・・・自分としては大いに不満が残るものになってしまいました。理由は「準備不足」です。  リーマンショック以来、震災などもあってレッスンが激減していました。一時は、ピーク時の半分にも満たないレッスン数で、「こんなことをやっていていいのかなぁ・・」と悩んだこともあります。しかし、多くの生徒に励まされて、なんとか頑張ってこられました。8月ごろから、長い間お休みしている生徒が戻ってきたり、新しい生徒が入ったりして、先月中旬以降、想像以上に忙しくなってしまったのです。資料作りもバタバタで、何より、自分の練習時間が激減してしまったことが残念でした。もっと良い演奏を聴かせたかった、というのが、正直なところです。  それなりに楽しんでくれた生徒も多かったようですが、次回はもっと余裕を持って、内容の濃いものにします!

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